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重力筋無力症(告示番号 11)

重力筋無力症とは?

重力筋無力症とは、言葉の通り筋肉に力が入りにくくなる病気です。人は通常、脳から「筋肉を動かすぞ」という信号を送ります。神経を通り筋肉までその指令が行き届き、筋肉を動かすことができるのです。神経の末端からは「アセチルコリン」という物質が筋肉に向かいます。筋肉表面には「アセチルコリン受容体」があり、受け取るのですが、この「アセチルコリン受容体」を自らの抗体で壊してしまう病気が重力筋無力症です。抗体からの間違った攻撃で「アセチルコリン受容体」は減ってしまい、筋肉をうまく使えなくなってしまいます。

減った「アセチルコリン受容体」を全身で補い合うため、運動すればするほど筋肉が動きにくく、力が入りにくくなるのです。

 

患者さんはどのくらいいるの?

国内の患者数は29,000人ほどです。2006年の全国疫学調査 では患者数は15,000人ほどでしたこでこの10数年で約2倍に増えていることがわかります。人口10万人あたり、23.1人の方が重力筋無力症です。埼玉県坂戸市の人工がちょうど10万人ぐらいですので坂戸市ではあれば23人ほどの患者さんがいるということになります。

 

原因は?

原因の特定にはまだ至っていません。自分で自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患であることと、重力筋無力症の約3割が胸腺腫(きょうせんしゅ)を併発しているため、胸腺との関係性があるのではないかと考えられています。

 

どんな人に多いの?

発症は女性では30代から50代、男性では50代から60代の人が多いです。しかし、5歳未満に発症する患者も7%います。男女比は1:1.7で女性の方が圧倒的に多いです。

 

遺伝するの?

先天性の筋無力症候群は遺伝するので勘違いされることもありますが、重力筋無力症は自己免疫性の病気のため遺伝はしないです。ただ素因として自己免疫性の病気になりやすい人がいるのでその素因は遺伝性があるようです。

 

どんな症状が出るの?

特徴的な症状は筋力低下と 易疲労性(いひろうせい)です。筋肉をうまく使えなくなり、疲れやすくなるということです。疲れやすいのは「怠けている」だけだと勘違いされてしまうことも多いようです。
筋肉がある場所全身に症状は現れますが、特に目や口などの箇所に症状がある患者さんが多いですが、四肢に症状が強く出る患者さんもいます。

◉目…ものが二重に見える、斜視、目の周りの筋力が衰える、眩しい、シャンプーがしみる、目が疲れやすい

◉口…しゃべりにくい、のみこみにくい、噛みにくい、つばが溢れる、食べるとむせる、鼻声になる、表情がうまく作れない

◉四肢…持ったものを落としてしまう、字が書けない、歩けない、立てない、階段がのぼれない

◉呼吸筋…息ができない

心臓や腸の筋力に症状は出ません。

 

診断はどうするの?

自覚症状から、様々な検査を経て重力筋無力症だと診断します。

◉アイスパック試験

まぶたが下がっている方の目に冷凍したアイスパックを約2分間あてた後、まぶたが2mm以上あがって眼が開きやすくなるかどうかをみます。

◉テンシロンテスト

アセチルコリンの分解を抑える薬剤(テンシロン)を投与してみて、眼や四肢などの自覚症状が改善されるかどうかを確認します。

◉血液検査

抗アセチルコリン受容体抗体を測定します。全身症状のある患者さんの9割以上がこの抗体が陽性になります。抗アセチルコリン受容体抗体は陰性の患者さんの約半数は別の抗体が見つかっています。

◉筋電図検査

体を動かす筋肉が興奮する際に発生する活動電位を記録します。運動を繰り返すことによって筋肉が興奮しにくくなることを確認するために、神経を繰り返し刺激しながら筋電図をとり、数値が減少していくことを確認します。

◉画像検査

重症筋無力症の患者さんは胸腺腫を合併することが多いです。胸部CT検査を行うことで胸腺腫の有無を確認します。

 

治療はどうするの?

自覚症状の箇所や度合いにより医師と相談して治療法を考えていきます。

◉抗コリンエステラーゼ薬

神経から出たアセチルコリンが即時に分解酵素(コリンエステラーゼ)により、分解されてしまいます。この分解酵素の働きを阻止する目的で使われる薬が抗コリンエステラーゼ薬(メスチノンやマイテラーゼ)です。対処療法として使われ、重症筋無力症の症状を軽くすると期待されます。

◉胸腺摘出術

画像検査で胸腺腫が明らかでない場合でも、胸腺摘出術がすすめられます。小さな胸腺腫が埋もれている場合もあるからです。眼の症状が強い場合も全身の症状が軽症なだけだと考えられ、手術がすすめられます。全員におすすめするというわけではないので主治医とよく相談することが大切です。

◉免疫抑制剤

主に副腎皮質ステロイドを、抗体を産出するのを抑えるために投与します。免疫異常である抗体の産出を抑えることで、本来の神経から筋肉への伝達がスムーズにいくと期待されます。「少し飲んで終わり」ではなく、ある程度(半年ほど)は続けて内服するように指導されます。必ず自分で判断せず、薬の量を減らす場合は医師の判断を仰ぎます。自己判断でやめてしまうと症状が悪化する場合もあります。
ステロイドが使えない場合や、ステロイドと併用する場合は非ステロイドの免疫抑制剤も用いられます。

◉免疫グロブリン療法

献血ヴェノグロブリン®IH(1日あたり400 mg/kg)を5日間連日点滴静注する治療法です。後述する血液浄化療法と同じぐらいの効果が期待されます。特別な装置もいらず、小児や高齢者にも実施できます。

◉血液浄化療法

血液浄化療法は、一時的に血中の抗体を除去することができます。血液浄化療法には、抗体のある血液と正常な血液を交換する単純血漿(けっしょう)交換法や、血液をろ過し抗体のある部分を廃棄する二重膜ろ過法、血液を体外に循環させて抗体を吸着して残った血液を戻す免疫吸着法があります。抗体がなくなるので症状は劇的に改善します。ただ、新しく抗体の産生はされ続けるので短期間の効果となります。特別な装置を使います。

 

経過はどうなるの?

免疫異常の病気なので良くなったり悪くなったりします。急に完治することもありませんが、しっかり医師のもとで治療を続けていれば死に関わる病気でもありません。

症状が軽くなれば日常生活を問題なく送ることができます。

運動や出産などもできます。

そのためには医師と信頼関係を結び定期的に通うことが不可欠となります。

健康的な生活を心がけ疲れをためないことも大切です。

 

最後に

脊髄小脳変性症は進行性の病気ではありますが、病気のタイプによって現れる症状も様々であり、個別に対応していく必要があります。

また、典型的な症状がなく総合的な判断によって診断が行われるため、疑われる神経症状が現れたり家族内に診断された患者さんがいる場合には、早期に神経内科への受診が推奨されます。

<参考文献>
ガイドライン 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018
研究グループ 運動失調症の医療基盤に関する調査研究班

 

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