051〜100 循環器内科 心臓血管外科

特発性拡張型心筋症(告示番号 57)

特発性拡張型心筋症とは?

心臓は筋肉の収縮と拡張を繰り返すことで、全身に血液を送るポンプの役割を果たしています。この収縮がうまくいかなくなり、心臓が拡大してしまう病気を拡張型心筋症と言います。原因や理由がはっきりしているものではなく、原因がはっきりしていないものを「特発性」と呼びます。
特発性拡張型心筋症とは、原因がはっきりしていないのに、心臓の筋肉がうまく働かず心臓が拡大されてしまう病気のことです。不整脈や心不全、さらには脳梗塞などを起こす可能性があり、命を脅かす病気です。
心臓の中の左室に起こることが多いとされていますが、右室に起こることもあります。
国内心臓移植の80%がこの病気であるため、重症化する可能性がある病気で、完治もしないため、難病指定されています。

 

患者さんはどのくらいいるの?

全国に17,700人ほどいます。が、軽症の人は気づいてないことも多いため、患者数はもっと多いとされています。5年生存率は50%ぐらいだったのが、近年医療の進歩により76%まで増えています。さらなる医療の進歩が求められています。

 

原因は?

今現在、明らかな原因というのはわかっておりません。最近はウイルス性 (コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなど) の心筋炎が関係していることがあると報告されています。他には自分自身の免疫抗体が自分の心臓を攻撃してしまう、免疫異常が関わっていることにも注目が集まっています。栄養の偏りや飲酒の習慣が悪影響を及ぼす可能性があるとも言われています。

 

どんな人に多いの?

60歳前後が発症のピークです。が、他の年代の報告もあり、子供から高齢まで発症します。

患者数は男性の方が多く、男女比は2.6:1です。

 

遺伝するの?

特発性拡張型心筋症の原因は、未だ明らかになっていないことから「遺伝する」とも「遺伝しない」とも言い切れないのが現状です。しかし、遺伝的な要因が関係することもあることは分かっています。厚生省の全国調査では家族内発症が約5%認められました。遺伝子が関係する発症が3割で、遺伝子が関連していない発症が7割と報告されています。

 

どんな症状が出るの?

全身症状として、疲労感、動悸、息苦しさなどを感じます。はじめは運動した時に感じるだけで「疲れやすくなったかな」と思う程度ですが、症状が進行すると安静にしている時にも呼吸がしにくくなります。不整脈や心不全は死に繋がる可能性があります。
そして左室に多い特発性拡張型心筋症ですが、右室も障害されるとむくみが出てきます。水分が溜まってひどいときは1日位2、3キロ体重が増えてしまうほどです。

NYHA(New York Heart Association:ニューヨーク心臓協会)分類と言って心不全の重症度を分類した指標があります。

Ⅰ度

I度は、心臓の拡張しているので病気自体は進行しているけれど、自覚症状も現れない段階を指します。

Ⅱ度

Ⅱ度は運動をした際、自覚症状がでてきます。今までより疲労を感じるようになります。少しの運動で息が切れてしまったり自分でも「あれ?」と思うのがこの頃ですが、多くは「疲れやすくなったかな」と思う程度です。

Ⅲ度

Ⅲ度になると、普段の生活で行う行動で疲労を感じるようになります。少し階段をのぼるだけで動機や呼吸困難がおとずれます。お風呂に入るだけでも辛く感じるほどになるでしょう。

Ⅳ度

重症のⅣ度になると、寝ている時、安静にしている時にも疲労を感じ、動悸、呼吸困難、胸痛などが症状として現れるようになります。

特発性拡張型心筋症もこの指標に基づき進行していく病気です。

 

診断はどうするの?

問診で自覚症状を確認し、特発性拡張型心筋症の検査をします。
心電図や胸部レントゲンで心臓周りの様子を確認します。
心電図での異常は他の心臓疾患と同じような結果になります。
胸部レントゲンでは心臓が拡張してしまっていることや、肺に水が溜まっていることを確認できますが、心不全の症状としての診断しかできません。
心臓部分に異常があることが確認できたらさらに詳しく調べることで他の心臓疾患でないかどうかを調べます。
血液検査や心臓カテーテル検査も行われます。
他の心臓疾患でないと分かって初めて「特発性拡張型心筋症」と診断されるのです。

 

治療はどうするの?

軽症の心不全症状が見られる場合は薬物療法で対応します。ベータ遮断薬は多くの患者さんに使われていますし、延命効果などがあるアンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などもベータ遮断薬とともに併用されています。ただ、副作用も考えながら使わなくてはいけないので、医師とのコミュニケーションや定期的な観察が欠かせません。
むくみがひどく水が溜まる場合には利尿薬も使われますが副作用として心臓の機能低下や不整脈に繋がることあるので様子を見ながら慎重に使います。
心不全症状が重くなると入院して長期間安静状態を保たなくてはなりません。運動制限も行われます。
治療薬以外の治療では、心臓に埋め込んで心臓の収縮を促す心臓再同期機能付き除細動器や、ペースメーカー療法も採用されます。
心臓リハビリテーションも効果的であると報告されています。
薬物療法や非薬物療法を駆使しても心不全を繰り返すような状況の場合、心臓移植という選択肢を選ぶこともあります。ただ、心臓移植を決めてもドナーが見つかるまで数年待つことになるようです。

 

経過はどうなるの?

現代の医療では進行を防ぐことができず、最終的には心臓移植に頼らざるを得ない状況です。心臓移植適応例の80%が特発性拡張型心筋症であることから、確実に進行していくことが分かります。
死因は心不全や不整脈の割合が多いです。
しかし、症状が軽症のうちから治療を始め、社会復帰して日常生活を送っている人も多くいます。それでも完治したわけではないので、薬は一生飲まなくてはいけないし、定期的に検査は必要になります。何より健康的な生活を心がけ不摂生はやめることもとても大切です。
睡眠、栄養、心臓に負担をかけない生活、禁酒、禁煙、水分や塩分の調整などに注意しながら生活しましょう。
5年生存率は医療の進歩により伸びてきて今は76%です。この先治療薬や治療薬方法の発展により生存率が伸びる可能性は十分にあります。

 

最後に

 

<参考文献>
ガイドライン 心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)
研究グループ 特発性心筋症に関する調査研究班

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