001〜050 免疫 / アレルギー内科

全身性エリテマトーデス(告示番号 49)

全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus:SLE)は、自己免疫疾患の1つです。

病名の由来は、 「全身」を意味する systemic、ラテン語で「狼」を意味する lupus、「赤い斑点」を意味する erythematosus

の3つからきており、「狼に噛まれたような赤い斑点が全身にできる」という症状を表しています。

私たちの身体は通常、免疫細胞が外部からのウイルスなどを攻撃することで健康を守っています。

しかし、自己免疫疾患では自身の身体を外部のもの(異物)だと誤って認識してしまい、自らを攻撃してしまいます。

1950年頃は発症から5年後の生存率が50%といわれる恐ろしい難病でしたが、現在の生存率は95%前後まで改善しています。

ただし、完治することはなく、治療は長期にわたるため難病指定とされています。

 

患者さんはどのくらいいるの?

日本では、6万人から10万人の患者さんがいると考えられています。

全身性エリテマトーデスと認められているのは6万人ほどですが、申請をしていない人やまだ診断されていない人も合わせると患者数は2倍ほど増加するのではないかとも言われています。

仮に患者数が10万人だとすると、日本の47都道府県それぞれに約2100人ずつ患者さんがいるということになります。

もちろんあなたの住んでいる都道府県にも多くの患者さんがいます。決して他人事とは言えない病気です。

 

原因は?

何らかの理由で免疫システムに異常が起き、自分の身体を攻撃してしまうことが原因とされています。

免疫システムに異常が起きる明らかな理由はまだ分かっていませんが、「何らかのきっかけ」が病気の発症に繋がっていることまでは分かっています。

その「きっかけ」としては、海水浴・日光浴・スキーなどで浴びる紫外線、風邪などのウイルス感染、怪我、妊娠・出産、外科手術、ある種の薬などが報告されています。

 

どんな人に多いの?

白色人種より有色人種の方が多く、また特定の地域で患者数が多いという報告もあります。

そして、女性が圧倒的に多く、日本では患者さんの男女比が1:9です。

特に「20代から40代の女性」が多く、妊娠に関わるなホルモンとの関係があるとも言われています。

 

遺伝するの?

遺伝子はいくらか関与するといわれていますが、明らかな統計はとれていません。

遺伝子が同じと言われる一卵性双生児において、その発症率は25%〜60%前後にとどまっています。

全身性エリテマトーデスが多く発症する家系があるいう報告もありますが、原因解明にはいたっておりません。

近年では、50以上もの複数遺伝子が病気の発症に関わっているということが分かってきました。

 

どんな症状が出るの?

病名に「全身性」とついているだけあって、症状は全身に現れます。

重症度や症状の出る箇所などは、個人差がとても大きいです。

皮膚症状だけ出ている場合は、「皮膚(性)エリテマトーデス」と呼びます。

 

全身症状

発熱(微熱)、疲れやすい、身体がだるいなど、非特異的な症状が現れます。

 

皮膚や粘膜の症状

皮膚の粘膜に、炎症や赤い斑点ができます。

以下の通り、いくつか典型的な症状があります。

 

蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)

鼻から両頬にかけて現れる蝶が羽を広げたような紅斑です。

痛みやかゆみはないことが多く、紅斑は少しもりあがっています。

 

円板状紅斑(えんばんじょうこうはん)

主に顔や耳、唇、頭部に見られる症状です。

首より下の全身に見られることもあります。

円板(ディスク)状の紅斑は、かさぶたのように皮膚がぶ厚くなりカサカサしています。

 

口腔内潰瘍(こうくうないかいよう)

口腔内の奥や頬の部分に、口内炎のような赤みや白い盛り上がりができます。

痛みがないことも多く、自分では気づきにくい症状です。

口腔内だけでなく、鼻や喉の粘膜にできることもあります。

 

凍瘡様紅斑(とうそうようこうはん)

手足の指や耳などに、しもやけのような紅斑ができます。

春になっても治らないことでしもやけとの違いが分かります。

 

脱毛

朝起きたら枕に髪の毛がびっしりついたり、髪の毛が細くなったり少なくなったりします。

頭皮にできた紅斑部分に脱毛が起こると、治らないことも多いです。

 

光線過敏症

紫外線を浴びた部分に紅斑ができます。

水ぶくれができたり、熱が出ることもあります。

 

レイノー現象

手足の先の血流が悪くなり、白くなったり紫色になり、痛みやしびれを感じることもあります。

血流が回復すると、通常の肌の血色に戻ります。

 

筋肉や関節の症状

関節痛や、筋肉痛を伴う場合があります。

 

腎臓の症状

腎臓の症状はまれではなく、全身性エリテマトーデスに伴う腎障害は「ループス腎炎」と呼ばれます。

ループス腎炎は、腎臓の中にある血液をろ過するフィルターに炎症が起き、腎臓の機能が低下する症状です。

血尿や蛋白尿などの異常が見つかり、腎臓の症状から全身性エリテマトーデスと診断されることも多いです。

初期には自覚がありませんが、腎障害が進んでくるとむくみ、食欲不振、全身のだるさなどが現れます。

末期には腎不全の状態になることもあり、血液の電解質が狂ったり、老廃物を排出できないといった症状が見られます。

 

肺や心臓の症状

肺や心臓をおおう膜に炎症が起こり、前者は「胸膜炎」、後者は「心外膜炎」と呼ばれます。

全身性エリテマトーデスの患者さんで胸の痛みや動悸、息切れ、息苦しさなどの症状が見られる場合は、胸膜炎や心外膜炎の可能性があります。

間質性肺炎や肺胞出血、心筋炎といった重篤な臓器障害もまれに起こることがあり、咳や発熱など風邪のような症状にも注意が必要です。

 

血液の症状

貧血やめまい、動悸、息切れ、疲れやすさなどの症状が見られることがあります。

免疫システムの異常によって赤血球が破壊されると、「溶血性貧血」という状態になります。

また、白血球のうちリンパ球が減少することで感染症にかかりやすくなり、血小板が減少すると血液を凝固させる働きが鈍くなり出血しやすくなります。

 

神経の症状

けいれん、頭痛、手足のしびれ、筋力の低下が見られます。

身体の症状だけでなく、不安感、抑うつ状態、認知障害、幻覚や妄想、意識がもうろうとするなど、様々な精神症状が報告されています。

これらは、中枢神経や末梢神経が障害されることによって現れる症状です。

重症の場合は、てんかん発作や脳梗塞などが起こる可能性もあります。

 

上記のように、様々な症状がありましたが、これらはすべて免疫システムが自分の身体を攻撃してしまうことで引き起こされます。

攻撃する部分によって、重症度や症状が出る箇所などは個人差がとても大きいです。

 

診断はどうするの?

全身性エリテマトーデスの診断は、内科(膠原病・免疫・アレルギー内科、腎臓内科など)、皮膚科などの診療科で行われます。

前述の通り多様な全身症状が現れるため、その他の診療科から専門医へ紹介され診断されることも多いです。

まずは問診で、症状が気になり始めた時期や今の状態、病歴、家族に同様の症状の人はいるか、合併症の有無、妊娠・出産について、アレルギーがあるかなどを聞きます。

また、皮膚や関節、全身の状態を確認し、全身性エリテマトーデスの疑いがあるかどうかを判断します。

その後、血液検査や尿検査、画像検査などの精査を行い、その他の病気の可能性も考えながら慎重に診断します。

 

治療はどうするの?

全身性エリテマトーデスは、病気の症状が強く出る「活動期」と、病気の症状があまり出ない「非活動期」があります。

症状はよくなったり悪くなったりを繰り返しながら、症状が現れなくなる「寛解(かんかい)」を目指します。

 

内科的治療

全身性エリテマトーデスの基本的な治療法は、薬物療法です。

内服薬の他には、点滴や注射による投薬、皮膚疾患の部分には塗り薬なども使用します。

どのような薬があるか紹介いたします。

 

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(エヌセイズ)

この薬は、解熱、鎮痛、抗炎症作用があります。

炎症自体を抑える力は弱いですが、痛みを素早く和らげることができるため、鎮痛を目的に使用されることが多いです。

軽症の場合、特に症状が発熱、関節痛などしか見られない場合には内服薬が使用されます。

また、関節痛や関節炎などの局所の症状が強い場合には、貼り薬や塗り薬などで対応することもあります。

 

ステロイド

ステロイド薬は、もともと体内の臓器から分泌されているステロイドホルモンの働きに似せて合成された治療薬です。

炎症や免疫反応を強力に抑える働きがあり、全身性エリテマトーデスにおける治療の中心となるお薬です。

 

軽症〜重症の患者さんまで幅広く使用されます。

軽症の患者さんには、前述のNSAIDsが効かない場合にステロイドの外用薬や少量の内服薬から始めます。

中等症や重症の患者さんには、ステロイドは規定の量(軽症の人より多め)から開始し、今出ている症状をできるだけ早く改善することを目標とします。

症状が落ち着き、検査でもそれが確認されれば、ステロイド量を少しずつ減らしていきます。

なお、重症のループス腎炎や精神・神経症状などを伴う一部の患者さんには、短期間(3日間)で大量のステロイドを点滴投与することもあります。

 

とても効力の強いステロイドですが、副作用もあるので注意が必要です。

よく見られる副作用は、身体重増加、顔が丸く膨れる満月様顔貌(ムーンフェイス)、糖尿病、骨粗鬆症、高血圧、感染症、脂質異常症や、不安、不眠、抑うつのような精神症状です。

ステロイドを長期にわたり使用する場合は、副作用に対して予防・軽減する薬を併用することがあります。

 

ステロイドは、短期間の使用で症状の軽快・改善を期待されますが、ステロイド量は徐々に減らす必要があります。

急激に減らしたりやめてしまうと、症状が悪化(再燃)することになり、再びステロイド量を増やして治療を行わなくてはならない場合があります。

また、前述の通りステロイドホルモンの働きに似せて作られた薬なので、ステロイドを使用中はステロイドホルモンを分泌している臓器(副腎)の働きが低下します。
(副腎がホルモン分泌をさぼっている状態)

したがって、急にステロイドをやめてしまうと、体内から分泌されるステロイドホルモンの量が不足し、めまいや吐き気だけでなく、ひどい場合にはショック状態に陥ることもあります。(副腎機能不全)

 

免疫抑制薬

免疫抑制薬は、自分の身体を攻撃している免疫システムを抑える効果があり、全身性エリテマトーデスの進行を抑えてくれます。

ただし、炎症を抑える効果はあまり強くないため、主にステロイドとの併用が行われます。

副作用のためステロイドの増量ができない場合や、ステロイドを減量したいのに症状が落ち着かない場合などに、免疫抑制薬を追加することで治療の助けになります。

ただし、正常な細胞の働きも抑制してしまうため、副作用として貧血などの骨髄抑制や感染症などを引き起こすことがあります。

 

免疫調整薬

免疫調整薬には、炎症を抑えたり免疫システムを調節する働きがあります。

欧米では、50年以上も前から全身性エリテマトーデスと皮膚エリテマトーデスの標準的な治療薬として使われてきました。

もともとはマラリア治療のために開発された薬なので、「抗マラリア薬」と呼ばれることもありますが、現在では様々な病気の治療に使われています。

服用が長期にわたると、副作用として網膜症が現れることがあるため、免疫調整薬を使用する場合には眼科での定期的な検査が必要です。

 

生物学的製剤

体内にあるタンパク質の作用を利用して、特定の物質や細胞の働きを阻害する治療薬で、点滴や注射として使われます。

ステロイドや免疫抑制薬による治療では効果が十分に得られない場合に使用されます。

全身性エリテマトーデスではこの薬を使うことで、自分の身体を攻撃してしまう免疫システムの活性化を阻害するという効果を得られます。

免疫の機能を強力に抑える効果がある代わりに、副作用として感染症にかかりやすくなります。

 

その他の治療法

アフェレーシス療法

アフェレーシスとは、ギリシャ語で「分離」という意味です。

アフェレーシス療法には、主に「血漿(けっしょう)交換療法」と「血球成分除去療法」があります。

前者は血液中の血球を除いた部分である血漿(けっしょう)を一旦取り出し、後者は病気の原因となっている血球を取り除きます。

この治療法は、病気の原因となっている有害な物質を機械的に分離・除去して症状の改善を図ります。

薬物療法では十分な効果が得られない場合に、補助的な治療法として取り入れられています。

 

経過はどうなるの?

全身性エリテマトーデスは、症状が落ち着けば普段通りに生活できますが、慢性の病気であり治療は長期にわたります。

安定した状態をできるだけ長く維持していくために、定期受診や服薬、日常生活における自己管理がとても大切です。

 

症状が重い場合にはもちろん入院が必要となりますが、状態が落ち着いていれば定期受診による治療のみで生活することも十分可能です。

定期受診になっても、自己判断で通院をやめたり薬を減らしたりせず、主治医の指示を守るようにしましょう。

なぜなら、患者さん本人が「良くなった」と思っていても再び症状が悪化してしまったり、新たな症状が現れることもあるためです。

定期受診によって身体の状態を評価し、治療効果が出ているのか、現在行われている治療法が適切かを確認してもらいましょう。

安定すれば1ヵ月〜3ヵ月ごとの通院で問題ありません。なによりも、定期受診を怠らないことが重要です。

また、使用している薬も減量していきますが、これも必ず医師による指導のもとで行ってください。

 

最後に

日常生活では適度な運動、健康的な食事、ストレスを溜めないなど、自分の症状に合わせながら気をつけて生活します。

全身性エリテマトーデスを誘引してしまう可能性のある、感染症、過度な紫外線、妊娠、出産などには特に注意が必要です。

<参考文献>
ガイドライン 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン 2019
研究グループ 自己免疫疾患に関する調査研究

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