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全身性強皮症(告示番号 51)

全身性強皮症とは?

全身性強皮症(Systemic sclerosis:SSc)とは、皮膚をはじめとする身体中の臓器が硬くなってしまう(硬化する)病気です。

血流が悪くなり手足のしびれ、痛み、むくみなどの末梢循環障害などを伴います。

発症から5~6年以内は進行を続ける「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」と、進行がほとんど見られない比較的軽症の「限局皮膚硬化型全身性強皮症」に分けられます。

「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」は、発症から5~6年が経つと皮膚の硬さは自然と戻りますが、内臓の病変は戻らないという特徴を持っています。

原因や治療法なども確立されておらず、膠原病の一つとして難病指定とされています。

 

なお、似たような名前の病気として「限局性強皮症」があります。

こちらは皮膚だけが硬くなる全く別の病気であり、前述の「限局皮膚硬化型全身性強皮症」とは全く異なる病気の概念です。

 

患者さんはどのくらいいるの?

国内の全身性強皮症の患者さんは2万人以上とされています。

ところが、症状に気づかなかったり病院でも診断されなかったりと、軽症の患者さんは全身性強皮症であることを知らない場合も多いようなので、患者さんの数は2万人の数倍はいると考えられています。

1000人に1人は全身性強皮症の患者さんではないかという考えもあります。

そうなると、国内の患者さんの数は10万人超えとなり、決して珍しくはない病気と言えます。

 

原因は?

「なぜ全身性強皮症になってしまうのか?」、その原因はまだ解明されていません。

しかし、医学の進歩により以下の3つの異常が原因として挙げられるようになりました。

  1. 免疫異常
    通常は免疫細胞が体内に入ってきた異物(ウイルスなど)を攻撃しますが、免疫システムの異常によって自分の身体を異物だと誤って認識し攻撃してしまいます。
  2. 線維化
    線維芽細胞の過剰な活性化によって、なめらかに動くはずの筋肉や臓器が硬くなります。
  3. 血管障害
    血流が悪くなり、その結果としてレイノー症状や指先の潰瘍などが生じます。

この3つがどのように作用しあっているかはまだ不明であり、なぜ起こるのかも遺伝的な要素や環境的な要素が関わっていると考えられています。

 

どんな人に多いの?

圧倒的に中年女性に多い病気です。

男女比は1:9とも1:12とも言われており、患者さんのほとんどは女性です。

30代から50代がピークですが、70歳以上や小児期にも発症例があります。

 

遺伝するの?

全身性強皮症自体が遺伝することはありません。

ただ、全身性強皮症になりやすい遺伝子(疾患感受性遺伝子)はあるので、遺伝との関係は切り離せないと考えられます。

そうは言っても、1つの疾患感受性遺伝子が原因で発症することはなく、いくつかの疾患感受性遺伝子の組み合わせや環境要因も関与しています。

 

どんな症状が出るの?

患者さんによって様々な症状が現れるので「全身性強皮症と言えば絶対これ!」というものはありませんが、特徴的なものはいくつかあります。

 

レイノー現象

全身性強皮症の患者さんの90%に現れるという、最も特徴的な症状です。

初期症状がレイノー現象だという方も多いです。

レイノー現象とは、寒い・冷たいなどの刺激や、精神的な緊張によって手足の指など末端部分に血流障害が起こることを言います。

そのような環境刺激や精神的ストレスにより血管がけいれんを起こして指先・つま先などが突然白くなり、紫色、赤色を経てまた元の色に戻ります。

同時に、しびれや感覚の違和感、痛みを感じる人もいます。

レイノー現象を防ぐためには、まずは血流障害の原因となる刺激を避けることが重要です。

例えば、冬であれば手袋をしたり、カイロを持ち歩いたり、夏のエアコンにも注意が必要です。

また、炊事をする場合にお湯を使う、冷蔵庫の中を触るときは手袋をするなど、日常生活の中でも対策できることは多くあります。

タバコは血管を収縮させ血流障害を悪化させるため、速やかにやめましょう。

 

皮膚症状

皮膚硬化

線維化によって皮膚が硬くなります。(硬化する)

硬化は指先などから始まり、少しずつ身体の中心部(体幹側)へ向かって進んでいきます。

初期では自覚症状はありませんが、進行すると皮膚がつっぱったり白くなるので気づきやすいです。

顔面の硬化が始まると口が開きにくくなったり顔面の筋肉を動かしにくくなるので、表情が乏しくなります。

 

皮膚の色素異常

全身の皮膚か黒ずんだり、逆に色素が抜けて白っぽくなったりします。

 

皮膚の潰瘍

手足の指先に血流障害が起き、潰瘍(皮膚の上皮より深いところまでできる炎症)ができることもあります。

潰瘍は、肘やかかと、手の甲にできることもあります。

 

皮膚の血管拡張

顔面や手足に赤い斑点ができます。

これは血管が拡張して出現するため、血管拡張自体は特に有害ではありません。

 

足の裏のたこ・うおの目

硬くなった足裏の皮膚に、歩行時の摩擦や刺激が加わることで生じます。

全身性強皮症の場合、通常のたこ・うおの目の治療法とは異なるので注意が必要です。

 

皮膚の乾燥・かゆみ

皮膚が硬くなると、乾燥やかゆみをともなう場合があります。

 

関節症状

肘・膝・足首などの関節部分に炎症や痛みが生じたり、指の曲げ伸ばしが思うようにいかなくなる場合があります。

関節が固まらないように予防するには、日頃から関節の曲げ伸ばしを心がけることが大切です。

 

消化器症状

消化器に病変が現れる場合、障害されやすいのは食道です。

食道の筋肉が硬くなることで、食べ物が通りにくくなったり、胃酸が逆流して胸やけや「逆流性食道炎」を起こしたりします。

慢性的な下痢や便秘を起こす場合も稀にあります。

 

肺症状

肺が障害されると呼吸がうまく行えなくなり、「間質性肺疾患」と呼ばれます。

間質性肺疾患は、全身性強皮症と診断された患者さんの約半数に見られます。

これは肺組織の壁である「間質」が硬くなってしまうことで、肺が膨らみにくくなるために生じます。

呼吸障害によって、慢性的な咳や息切れ、疲れやすさなどの自覚症状が現れます。

 

また、肺の血管が硬くなると「肺高血圧症」という病気を合併することもあり、放置すると肺だけでなく心臓の障害へ進展します。

肺高血圧症の自覚症状として動作時の息切れがありますが初期には気づきにくく、ある程度進行してから診断されることも多いです。

 

腎症状

それほど頻度は多くありませんが、腎臓が障害されると「強皮症腎」と呼ばれます。

腎臓で調節しているホルモン分泌に異常が起こり高血圧になったり、頭痛や頭部の不快感・めまい、胸痛などの自覚症状が現れます。

適切な処置をせず放置すると尿が出なくなったり腎不全になる可能性があるため、早めの対応が必要です。

 

心症状

頻度は稀ですが、心筋が硬くなって心臓が障害されると、血液を全身へ送るための心臓のポンプ機能がうまく働かなくなります。

慢性的に放置すると、最終的には心不全になる可能性があります。

また、前述した「肺高血圧症」によって心臓に負担がかかり、心臓が障害されることもあります。

 

その他の症状

シェーグレン症候群(乾燥症候群)

目や口の中が乾燥してしまう症状です。

涙が減って、異物感やチカチカするなどという目の症状や、唾液が減って、乾燥するといった口の症状が現れます。

 

診断はどうするの?

全身性強皮症は「全身性」というだけあり、病変は多臓器に出現します。

そのため、様々な全身検索を行って診断をしていきます。

問診・視診では、レイノー症状の有無や皮膚の硬化、手足のこわばりなどをチェックします。

加えて、その他の内臓に病変がないかを調べるため血液検査、尿検査を、画像検査、呼吸機能検査、心エコーなどをも行います。

皮膚や各種臓器の硬化を調べるためには、組織の一部を切り取って顕微鏡で調べる「生検」が必要となります。

 

また、毛細血管の異常がないかを把握するために、爪郭(そうかく)部毛細血管ビデオ顕微鏡を用いた検査を行うこともあります。

 

治療はどうするの?

全身状態の経過を見ながら、それぞれの症状に合わせた治療法を選びます。

特に、皮膚硬化に対しては対処療法としていくつかの薬剤が使用されておリ、ある程度の効果が期待されています。

 

血管拡張剤

血流障害が出ている場合は血管拡張剤が使用され、レイノー現象や末梢循環障害を改善させます。

しもやけの治療に使われるビタミンEや、血圧を下げる時に使われるカルシウム拮抗薬なども効果が得られます。

また、プロスタグランディンといわれる成分を内服または注射で投薬することもあり、潰瘍に効果的とされています。

 

ステロイド

全身性強皮症が比較的早期に発見された場合や炎症症状が強い場合、筋炎など他の膠原病が合併している場合などに使用されます。

ステロイドは全身性強皮症以外の膠原病に対してもよく使われる薬ですが、皮膚の硬化に対しても効果が認められます。

しかし、ある程度の副作用も予想されるので限られた患者さんに対して投与されます。

通常は1日2〜3錠の内服量あれば副作用は比較的少ないとされています。

 

肺症状の治療薬

シクロホスファミド

免疫抑制剤の一種であり、間質性肺疾患に対して使用されます。

点滴または内服治療(ステロイドとの併用)が、皮膚硬化や間質性肺疾患に有効と考えられています。

 

肺高血圧症の治療薬

前述のように、全身性強皮症では肺の血管が硬くなり息切れが現れる「肺高血圧症」という症状がみられる場合があり、血管拡張薬をや血栓を予防する薬が使用されます。

従来はベラプロストナトリウム(プロスタグランディン製剤)が主でしたが、最近はそれに加えてエンドセリン受容身体拮抗剤、5型ホスホジエステラーゼ阻害薬という新しいタイプの肺高血圧症に対する治療薬が日本でも使用されるようになりました。

これらは肺の血管を特異的に拡張させるので、肺高血圧症の改善を期待できます。

 

その他の治療薬

消化器の症状に対しては消化器系の薬剤、関節炎に対しては炎症をおさえる薬剤、皮膚潰瘍の細菌感染に対しては抗生物質,腎臓の変化に対しては血圧を下げる薬剤と、各症状に対して様々な薬が使われています。

 

経過はどうなるの?

全身性強皮症は一昔前までは進行性の病気と言われていましたが、「限局皮膚硬化型全身性強皮症」の場合、多くの患者さんは軽症のまま維持できていることが報告されています。

特に皮膚硬化はごくわずかな進行しか起こらず、最終的には前腕までなどと限定された部位での皮膚硬化にとどまります。

内臓の病変も逆流性食道炎がみられることもありますが、重症なものはほとんどありません。

 

一方で、「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」の場合は、発症してから数年は皮膚硬化が進行しますが、ピークをすぎると徐々に皮膚硬化が改善してきます。

また、その他の膠原病とは異なり、全身性強皮症では一般的に病気のピークは1回のみとされています。

しかし、その他の内臓病変を合併することが多く、多くの患者さんは発症してから数年後に各種内臓の病変が見つかります。

そのため早期に適切な治療を開始し、なるべく進行させないまま病気のピークを乗り切ることが大切となってきます。

 

最後に

全身性強皮症は全身の臓器に病変が現れる可能性のある病気ではありますが、日常生活の心がけで症状の予防が行えたり、早期に治療を開始すれば病気の進行をとどめることが可能です。

疑わしい症状が現れたら早めに専門医の診断を受けるのが良いでしょう。

<参考文献>
ガイドライン 全身性強皮症診療ガイドライン 2012
研究グループ 強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインに関する研究斑

 

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