パーキンソン病とは?
パーキンソン病とは主に中高年期に見られる病気で、完治することが未だに困難だと言われています。
脳からの伝達がうまく行かず、手足のしびれや動作が遅くなるといった体の症状から精神疾患などの体以外の症状もあり、生活全体に影響を与えてしまう難病です。
進行性の病気なので最後は「発症してから10年後には寝たきりになってしまう」と言われています。
患者数も多く、家族の負担も大きいことから、治療薬の開発が強く望まれています。
患者さんはどのくらいいるの?
パーキンソン病を患っている人は全国で15万人ほどいます。
10万人あたりに換算すると100人から180人程度です。
例えば、仙台市の人口は全部で100万人ほどなので、その中には1000人から1800人のパーキンソン病患者がいるということです。
思ったより多いですよね。
年々増えてきているパーキンソン病は、難病でありながら私達の身近な存在の病気と言っても過言ではありません。
ここ20年で患者数も2倍以上、死亡数も2倍以上と増加中。これは高齢化が進んでいることも関係しているそうです。
なぜならパーキンソン病の患者の多くは50代以上であり、高齢になればなるほど発症率は高くなるからです。
60歳以上はかなり多く患者数は10万人中1000人ほど。
先ほどの仙台市を例に挙げると10000人がパーキンソン病ということになります。
高齢化が進むと、パーキンソン病の患者も増えていくという訳です。
全員が120歳まで生きることができたら全員がパーキンソン病になる、なんてことも言われています。
ここまで来ると「高齢者の病気」と決めつけてしまいがちですが、40代以下の若い世代で発症する人も存在しています。
しかし、その場合は「若年性パーキンソン病」と呼び全体の10%と少ないです。
原因は?
脳には様々な細胞がありますが、パーキンソン病の発症には脳内の黒質(こくしつ)という部分が関わっていることが分かっています。黒質に異常なたんぱく質が蓄積され、黒質部分の神経細胞が減ります。
神経細胞が減ると作られるはずのドーパミンが減少してしまいます。
ドーパミンが減少することにより、脳から体に指令が上手く伝わらなくなり、パーキンソン症状と呼ばれる様々な症状が生じてしまいます。
ただ、なぜ黒質に異常が起きて神経細胞が減るのかという原因はまだはっきりわかっていません。
元々その人がもつ素因や、環境、加齢などが合わさってパーキンソン病になると言われています。
どんな人に多いの?
パーキンソン病の原因となるドーパミン減少は、何のきっかけがなくとも加齢とともに減少することが分かっています。
ですから、パーキンソン病患者には高齢者が多いのです。
性格がまじめだったり几帳面な人がなりやすい傾向があると言われていますが、科学的な根拠は見当たりません。
パーキンソン病の原因となるドーパミン減少は、何のきっかけがなくとも加齢とともに減少することが分かっています。
遺伝するの?
遺伝性の素因と、環境素因が合わさってパーキンソン病を発症すると考えられています。
全体の5%は遺伝により発症するとも言われていますが、いくら遺伝性の素因があっても環境素因がないと発症はしないようです。
どんな症状が出るの?
手足のふるえ
座っていたり寝ている時などの「何かアクションを起こしていない」時に手足が意識と関係なくふるえてしまいます。
1秒間に4回から6回ぐらいのふるえです。
逆に、「何かしらのアクションを起こしている」時はふるえが止まります。
筋肉のこわばり
肩、膝、指などの筋肉がかたくなってしまい、スムーズに動かせなくなります。
膝がかたくなると走ることが難しくなり、指がかたくなると字を書くことが難しくなります。
また、顔の筋肉がかたくなると無表情のように見らることもあるようです。
動きが鈍くなる
一つ一つの動作が鈍くなってしまいます。
歩きたいのに少しずつしか足が出ない、書く字が小さくなる、話し声が小さくなるなどの症状です。
姿勢のバランスが保てない
真っ直ぐ歩いているつもりなのに、つまづいてしまうことが増えます。
急に止まったり、方向転換することが難しくなるようです。
座っていても立っていても、片方に傾いてしまいます。
このような運動症状がパーキンソン病の主な症状ですが、他にも非運動症状もあります。
自律神経の乱れ
便秘や頻尿、冷えやむくみ、発汗などに加え、立ちくらみや食後のめまいも見られます。
精神障害
うつ、不安、身の回りへの関心が薄れる、幻聴や錯覚、妄想などの症状もみられます。
認知障害
物忘れがひどかったり、段階を踏んだ行動ができなくなったりなどの症状が見られます。
その他
睡眠障害、嗅覚障害、疲労、体重減少など。
診断はどうするの?
パーキンソン病の診断は、神経内科で行います。
問診で症状や期間、病歴などを聞かれます。
症状は多岐にわたるため、問診だけでは判断が難しいのもパーキンソン病の特徴です。
そこで問診後、他の脳の病気ではないか調べるためCTやMRIで脳の画像検査を行います。
脳腫瘍などの他の異常が見られないことでパーキンソン病である可能性が上がります。
他にも、心臓の交感神経の状態を調べる「MIBG心筋シンチグラフィー」という検査が行われることもあります。
これは、ある薬剤を投与して心臓に集まる様子を画像で調べる検査なのですが、パーキンソン病の人はこの薬剤が心臓に集まりにくいので診断に使うことができます。
さらに、近年は「ドーパミントランスポーター(DAT)イメージング」という検査も登場しています。
この検査によりパーキンソン病やレビー小体型認知症などを識別できるようになりました。
治療はどうするの?
ドーパミンの減少によって脳からの指令がうまく伝わらないパーキンソン病には、いくつかの治療法があります。
内科的治療
レボドパやドパミンアゴニストといった薬を服用することで、ドーパミンを補充することができます。
補充したドーパミンを脳内に貯蔵し、必要に応じてドーパミンを使うことで、パーキンソン病の症状が良くなり、スムーズに動くことができます。
しかし、パーキンソン病は進行性の病気です。
薬の服用では足りなくなってくると、薬服用後は動ける(オン)のに薬が切れると動けなくなる(オフ)とが出てくるようになり、この状態をウェアリング・オフと言います。
この時期から体が勝手にくねくねするジスキネジアという症状も見られたりします。
治療にはドーパミン補充の薬が主ですが、他の作用を持つ薬も使われています。
・ドーパミンを長く脳内にとどまらせる薬
・ドーパミンの元を分解する働きを抑える薬
・ドーパミン神経からドーパミン分泌を促進する薬
・ドーパミンと共に減ってしまう物質を補充する薬
・ウェアリング・オフやジスキネジアを改善する薬
・ドーパミンと反対の作用をする物質を抑える薬など様々など
パーキンソン病は経過を見ながら複合的に薬を組み合わせて治療が行われています。
経腸療法
経腸療法は、パーキンソン病が進行し、ドーパミンを補充しても十分な効果がなくなってきたときに使う治療法です。
病気の進行に伴い服用だけではパーキンソンの症状はよくならなくなってくるので、直接薬剤を体内に送り届ける治療法がなされています。
専用ポンプとチューブを使い、薬剤吸収場所である小腸に送り届けます。
使うのは服用している薬と同じドーパミンを補充する薬です。
口から服用すると薬の効き目がなくなってしまう時間ができてしまうのですが、この治療法であれば切れ目なく薬を投与し続けられるので症状が安定します。
正しく使わなければいけないので主治医と十分話し合う必要があります。
外科的治療
脳深部刺激療法という手術を行います。
薬では症状が良くならなくなってきたときに使う療法です。
脳深部刺激療法(DBS)は脳の深いところに細い電線を挿入し、電気刺激を行うことでパーキンソン症状の緩和が期待されます。
薬物療法の補佐的な位置づけの療法です。
薬が切れてしまう「オフ」の状態が緩和されます。
しかしすべての人に合う治療法というわけではなく、年齢や体力、全身の状態なども加味しながら主治医と共に考える必要があります。
経過はどうなるの?
パーキンソン病は、少しずつ時間をかけて進行していきます。
大まかに、以下の5段階に分けられます。
レベル1 片側に症状
片側の手足などに症状が出るけど、日常生活に影響はほとんどない。
レベル2 両側に症状
両側の手足などに症状が出る。少し不便なこともあるが日常生活は送れる。
レベル3 活動はやや制限
震えや筋肉のこわばりだけでなく、転倒したりバランスが取りにくくなる。
日常生活はなんとか送れるが通常の仕事には支障をきたす。
レベル4 介護が必要
体の両側に強い症状が出る。介護が必要となってくる。
レベル5 車椅子などが必要
一人で起きたり歩いたりができなくなる。日常生活が介助なしでは過ごせなくなる。
発症後10年でほとんどの人がレベル3になり、転倒などが多くなると2級や3級の障害者手帳も申請すればもらえます。
該当する方は、ぜひ検討してみてください。
また、「特定疾患」に申請して対象患者であることが認めてもらえると、高額なパーキンソン病の医療費補助が出ます。
介護サービスなどを利用しながら家族や本人の負担を減らす事も大切です。
最後に
近年はパーキンソン病の原因となる遺伝子も見つかり、遺伝子治療の今後が期待されます。
遺伝子治療の開発が進んでおり、パーキンソン病は治らない病気ではなくなる未来はすぐそこまで来ているかもしれません。
長く付き合う病気ですので、できることをやりながら医療サービスを積極的に利用してみてくださいね。
<参考文献>
ガイドライン パーキンソン病治療ガイドライン2018
研究グループ 神経変性疾患領域における基盤的調査研究班