001〜050 眼科 神経内科

多発性硬化症/視神経脊髄炎(告示番号 13)

多発性硬化症/視神経脊髄炎とは?

多発性硬化症とは神経細胞がむき出しにならないように被っているカバーのような役割の髄鞘(ずいしょう)が免疫細胞の標的となり、髄鞘が壊され神経細胞がむき出しになり(脱髄)、神経からの命令が伝わりにくくなることで、様々な症状が出てくる病気です。主に中枢神経(脳・脊髄)や視神経が障害されるますが、1つではなく複数箇所障害される空間的多発性を持ちます。
免疫細胞は通常であれば体内に侵入したウィルスなどを攻撃して体の健康を守ってくれる存在ですが、何らかの異常があり体の正常な部分を破壊してしまうことが起こっているのです。
多発性硬化症は空間的多発性だけでなく、何度も症状がよくなったり悪くなったりする時間的多発性も持ち合わせています。
炎症を起こし、古くなってしまった脳や脊髄の炎症部分は硬くなるため、多発性硬化症という名前がつけられたようです。

多発性硬化症と分けられて考えられる病気に視神経脊髄炎というものがあります。症状は似ていますが治療薬が異なるので判別に注意が必要な病気です。視神経脊髄炎は視神経と脊髄を中心に強い炎症がおこります。血液中に抗アクアポリン4抗体というものが検出されることが特徴的です。この抗体が中枢神経のアストロサイトという細胞を攻撃することで発症します。主な病態が脱髄である多発性硬化症とは異なります。

 

患者さんはどのくらいいるの?

多発性硬化症の患者さんは国内に12,000人ほどいると推測されます。人口10万人あたり7.7人の有病率です。
視神経脊髄炎の患者さんは国内に4000人強いると推測されます。人口10万人あたり3.42人の有病率です。

 

原因は?

免疫細胞の異常が関わっていることが有力視されていますが、なぜ免疫細胞が異常を起こすのか、解明されていません。何らかの遺伝的素因を持った人に環境素因が揃って発病すると考えられています。環境素因には高緯度地域での生活や日照時間の短さ、EBウイルス感染に喫煙などが挙げられています。

視神経髄膜炎ではに抗アクアポリン4抗体が検出されると先述しましたが、この抗体が陰性の患者さんもいます。陰性の患者さん一部で、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質抗体が陽性の患者がいるのではないかと疑われていますが、研究結果が待たれています。

 

どんな人に多いの?

多発性硬化症の発症年齢は20~30歳前後と若い世代に発症しやすく15歳での発症例も見られます。男女比は3:1の割合で女性に多い病気です。

 

視神経髄膜炎の発症年齢は多発性硬化症より高齢で30〜40代の人が発症しやすいと報告されていますが60歳以降での高齢発症もみられます。男女比は9:1で圧倒的に女性に多い病気です。

 

遺伝するの?

病気自体が遺伝するということは起こりません。が、原因に遺伝性素因が挙げられているように遺伝子が関係していることは間違いなさそうです。現在ヒト白血球抗原(白血球上に見られる)という遺伝子の重要性が問われています。

 

どんな症状が出るの?

多発性硬化症と視神経髄膜炎とで症状が酷似しているものや微妙に違うものもあります。

○多発性硬化症
◉感覚障害…触った感触や、冷たい熱いなどの温度の感覚が通常とは変わってくる。鈍感になるか過敏になるかのどちらか。また、痛みやしびれ感などの感覚異常が生じる。
◉運動障害…ふらつき歩きにくくなる。体の片側動きにくくなる。手足に力が入りにくくなる。
◉目の障害…急に視力が低下する。目の前に霧がかかったように見えにくくなる。ものが二重に見える。視野が狭くなる。
◉排尿障害…残尿感。尿が出にくくなる。間に合わなくなり失禁することが出てくる。尿の回数が増える。
◉認知・精神障害…認知能力の低下。物忘れや理解力が低下する。うつ状態になる。高揚した気分が続く。

他にも体温が上昇することに注意が必要です。
発熱や入浴、運動などによりしびれ感などの症状が一時的に悪化することがあり、これをウートフ微候と言います。この一時的な症状の悪化は体温が下がるともとに戻ります。
首の神経細胞が障害されている場合、前かがみになると肩から背中にかけて電撃のような痛みが生じることもあります。これをレルミッテ徴侯と言います。この痛みは一瞬で首を真っ直ぐにすると消えます。

○視神経髄膜炎
5つの病変箇所により特徴的な症状が見られます。
◉視神経…視力低下や視野が狭くなるなどの視野障害が見られる。時には失明してしまうこともある。
◉脊髄…両手足もしくは両足の麻痺が見られる。下半身の感覚障害や排尿障害、排便障害など脊髄の全機能に障害が生じることが多い。
◉延髄最後野・脳幹…通常すぐにおさまるしゃっくりが、連続して継続的に続く。吐き気や嘔吐。
◉間脳・視床…仮眠や意識障害。抗利尿ホルモン分泌異常症による低ナトリウム血症(ナトリウムの濃度が低くなる)。
◉大脳…感覚障害、半身麻痺。

多発性硬化症のように慢性的な進行はしないですが、多くは再発性で再発すると症状がより重篤になります。体温が上昇することにより一時的に症状が強くなるウートフ微侯は多発性硬化症と同様に、視神経脊髄炎でも見られます。

 

診断はどうするの?

○多発性硬化症の診断
多発性硬化症の診断は脱髄が空間的および時間的に多発性を持っているかどうかを証明することで行われます。
問診をはじめ神経診察、髄液検査や電気生理検査、時にMRI検査などを行います。

◉問診…症状が多発性を持っているかどうかの確認をします。例えば症状が体のいろんな箇所で出ている、マシになったと思ったらまたひどくなったり、病歴などのエピソードを問診で聞き出します。
◉神経診察…問診から病巣部位を推測し、複数箇所に発生しているかを調べます。
◉髄液検査…髄液の性状を調べることにより、中枢神経に炎症が起こっているかどうかを調べます。多発性硬化症の50%の人に見られるオリゴクローナルIgGバンドの出現わIgGインデックスの上昇が見られるか調べます。
◉電気生理検査…手足、目などに光の刺激を与える検査です。脊髄や視神経で脱髄が起こってしまうことによる神経伝導の遅れがないかを調べます。
◉MRI検査…脳や脊髄で脱髄状態がどこに、どのぐらいあるかを確認します。造影剤を使用すると、新しい病変箇所はは白くうつり以前のものと区別がつきやすくなります。

これらの検査を経て「空間的および時間的な多発性」の有無を確認します。それと同時に、似たような症状が見られる他の病気ではないかということも調べます。区別が必要な他の病気の中には、後述する視神経脊髄炎も含まれます。

○視神経脊髄炎の診断

視神経脊髄炎は慢性的な進行性のある多発性硬化症とは違い、急性であることが多く、しかも重篤な症状であることが大半てまあるので、治療・診断は迅速に行われることが求められています。

◉問診…視神経脊髄炎の主な症状があるか、過去の病歴などを聞きます。

◉MRI…病変する箇所が多発性硬化症とは違うため、その確認をします。

◉血液検査…抗アクアポリン4抗体が陽性であることで視神経脊髄炎と診断されます。ただ、全員が陽性になるわけではありません。

◉髄液検査…オリゴクローナルIgGバンドの陽性率や、IgGインデックスは低く、逆に細胞数は増加することが検査で分かると多発性硬化症と区別できます。

多発性硬化症と似た症状の視神経脊髄炎ですが、多発性硬化症の再発防止に使われる治療薬が視神経脊髄炎を悪化させることになるのでしっかり検査して区別することが重要です。

 

治療はどうするの?

○多発性硬化症の治療
症状が悪くなった時の治療(急性期治療)と、症状が落ち着いている時の治療(再発予防治療)に分けられます。

◉急性期治療

・ステロイドパルス治療
ステロイドの点滴静注療法。規定量のメチルプレニゾロンを3日間点滴投与します。症状が改善しない場合、2回目を行うこともあります。
・血液浄化療法
血液を一旦体の外に取り出し、血球と血漿(けっしょう)に分離します。血漿中にある原因物質を除去した後、体内に血液を戻します。数回繰り返すことがあります。

◉再発予防治療

何度も症状がひどくなったりよくなったりと時間的多発性を持つ場合(再発寛解型)は再発予防治療が適していますが、少しずつ進行していくタイプの場合(一時性進行型)に対しては確立したものはありません。ちなみに一時性進行型は国内では5%ほどいます。

ベースライン薬から始め、再発が見られ治療効果が認められない場合は、第二・第三選択薬へ変更することがあります。はじめから疾患活動性がとても高い患者さんにはベースライン薬ではなく、第二・第三選択薬を使って治療を始めることもあります。

患者さんの状態や経過を見ながら主治医と相談して治療方針を都度修正していきます。

○視神経脊髄炎
こちらも急性期治療と再発予防治療に分けられます。

◉急性期治療
ステロイドパルス療法を行いますが、治療効果があまり得られない場合は血液浄化療法を選択します。重症の場合は免疫グロブリン大量静注療法を用います。

◉再発予防治療

治療をしないと再発し、機能障害が残ってしまいやすいので、ステロイド内服を用います。様子を見ながらステロイドの量を減らしますが、減量により再発することがあります。
ステロイド内服で効果が十分得られない場合は、免疫抑制剤を使います。
注意が必要なのは多発性硬化症での再発防止薬の中には視神経脊髄炎には効かないかむしろ悪化するものもあるので診断の際にどちらかはっきりさせることがとても重要です。

 

経過はどうなるの?

多発性硬化症の患者さんの80%から90%は再発と寛解を繰り返ししていく「再発寛解型」です。再発すると違う箇所の症状が出てくることと、以前からあった症状は進行していきます。「再発寛解型」では再発回数は少しずつつへっていきますが、半数の方は15年から20年後には、寛解の時にも体の機能の障害が進行していく「二次性進行型」に移行していきます。再発防止をいかにできるかが重要です。
5%の人があてはまる「一時性進行型」は寛解の時期がなく徐々に障害が進行していきます。

視神経脊髄炎の患者さんも寛解と再発がありますが、多発性硬化症のように徐々に進行するわけではなく急に重篤な状態になることが多く、再発防止が鍵になってきます。

どちらの場合も再発しないために治療を継続的に行うこととと普段の生活で気をつけることが必要です。

○体温の上昇を防ぐ
激しい運動や、暑い環境、入浴などでウートフ微候が出現することを防ぎます。エアコンを使う、温めのお湯に入るなど、日々の環境に気をつけます。

○感染症

感染症により免疫細胞の働きが活性化することを避けたいので、人混みを避ける、手洗いうがいを励行するなどで気をつけます。インフルエンザの予防接種は積極的に受けることが薦められています。

○適度な運動

体温があがりすぎない、ストレッチや涼しい時間帯でのウォーキングなどは体力維持のため行ったほうがいいでしょう。ウートフ微候が出現してしまったときは即座に体を冷やせるような準備は必要です。

○疲労やストレス

疲労やストレスなどが再発の引き金になることもあるので、適度にリラックスするように心がけましょう。

症状が軽くなると医療費助成から外れてしまい、病院から足が遠のきがちですが、治療をとめることなく、医師と継続的に繋がっていくことが再発防止にとても大切です。

 

最後に

 

<参考文献>
ガイドライン 多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017
研究グループ 神経免疫疾患のエビデンスによる診断基準・重症度分類・ガイドラインの妥当性と患者QOLの検証研究班

 

 

 

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