051〜100 消化器内科(消化管) 消化器外科(消化管)

クローン病(告示番号 96)

クローン病とは?

クローン病(Crohn's disease)は、主に若い人に見られる病気です。

口から肛門にいたるまでの消化管に、腫れやただれなどの炎症が起こります。

通常の炎症は、細菌やウイルスを身体から追い出そうとする反応として現れます。

原因となる細菌やウイルスの存在があれば、それらを取り除くことで炎症は治まります。

ところが、明らかな原因がなくても消化管に炎症が起こる病気があり、代表的なものに「クローン病」と「潰瘍性大腸炎」があります。

潰瘍性大腸炎の場合、炎症反応は大腸に限られます。

一方で、クローン病は全ての消化管に炎症反応が見られます。

 

クローン病という名前は、1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医クローン先生らによって報告されたことが由来です。

慢性の病気で完治することはないため、長期にわたる治療が必要となり難病指定とされています。

 

患者さんはどのくらいいるの?

国内での患者さんは4万人ほどです。

1976年には128人と報告されていたので、この数十年で随分増えていることが分かります。

これは病気が認知され診断される患者が増加したことや、食生活の欧米化も関係していると言われています。

アメリカは人口10万人に対して200人ほどですが、日本では人口10万人に対して27人程度と、アメリカと比較して10分の1程度の患者数という報告もあります。

例えば、人口100万人の仙台市では270人ほどの患者さんがいるということになります。

この病気は年々増加傾向にあるので、これからも増えていく可能性はあるかもしれません。

 

原因は?

クローン病の明らかな原因は分かっていませんが、免疫システムの過剰反応が消化管に炎症を起こしていると考えられています。

先進国で多く見られる病気なので、動物性脂肪やタンパク質を多く摂取することが発症するリスクが高めるのではないかとも言われています。

他にも、遺伝的な要因や、麻疹ウイルスなどの感染、食事中の成分、腸管の細い血管で生じる血流障害などが関係しているのではないかと報告されています。

また最近の研究では、何らかの遺伝的な要因を背景に、食事や腸内フローラ(腸内にあるたくさんの細菌)に対する免疫システムの過剰反応が、発症に関係していると考えられています。

 

どんな人に多いの?

若い人によく見られ、男性のピークは20歳〜24歳、女性のピークは15歳〜19歳で、全体としては20歳前後がピークです。

男女比は、2:1で男性の方が多く患っています。

30代以降は急激に発症率が低下し、むしろ今は小中学生で発症するケースが増えているようです。

軽症の状態が慢性的に続くなどしてクローン病だと診断されず、発症から長期間が経過してから診断にいたることもあります。

 

遺伝するの?

遺伝的な要因との関係はあると考えられています。

しかし、環境的な要因も関与するため、「クローン病が遺伝する」というよりも、「クローン病になるかもしれない体質が遺伝する」ぐらいに考えておいた方がよいでしょう。

もちろん、他の人に感染するような病気ではありません。

 

どんな症状が出るの?

主に大腸と小腸の末端(回腸)に好発しますが、口から肛門までのあらゆる消化管に症状が現れる可能性があります。

腸の縦方向に潰瘍ができたり(縦走潰瘍)、腸の粘膜に敷石を敷いたようにみえる潰瘍ができたり(敷石状病変)、連続性がなく飛び飛びの潰瘍が現れる(スキップ病変)ことが特徴です。

 

主な症状としては

腹痛、下痢、全身のだるさ、肛門の痛み、発熱、貧血、栄養障害(身体重減少)

などがあります。

また、潰瘍ができる箇所(小腸型、小腸・大腸型、大腸型)によって現れる症状は異なります。

 

症状が長く続くことにより、合併症の危険性が高まります。

合併症は以下のように、腸管(大腸・小腸)にできるものと、腸管外にできるものとで分類されています。

 

腸管合併症

クローン病の腸管合併症は、以下の所見が特徴的です。

・狭窄(きょうさく):炎症により腸管の間が狭くなってしまうこと

・穿孔(せんこう):炎症により腸管に穴があいてしまうこと

・瘻孔(ろうこう):炎症により腸管どうし、または腸管と外部組織に穴があいてくっついてしまうこと

・膿瘍(のうよう):腸管に膿がたまること

 

他にも、まれですが潰瘍からの大量出血や小腸がん、大腸がん、肛門がんを合併することもあります。

 

腸管外合併症

皮膚粘膜系合併症

・アフタ性口内炎:白っぽく浅い窪みのある潰瘍で、食べ物がしみたり痛みを伴います。

・結節性紅斑(けっせつせいこうはん):皮膚の内部(皮下脂肪組織)が炎症を起こし、紫色や赤色の斑点ができます。

・壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう):圧迫すると痛みを伴う、膿を持つ炎症ができます。

 

骨・関節系合併症

・強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)

・多関節炎

・骨粗鬆症

など

 

その他

・胆石

・腎結石

・眼病変

など

 

診断はどうするの?

クローン病を疑った場合は、以下のような検査を行います。

 

血液検査

炎症の有無(白血球数、CRP、赤沈などの数値)
貧血の有無(ヘモグロビン、赤血球数、ヘマトクリットなどの数値)
栄養状態(血清アルブミン、電解質などの数値)

を調べます。

血液検査で現在の状態を評価し、寛解(かんかい)状態に入っているか、症状がくすぶっていたり再燃していないかを確認します。

また、合併症の有無を早期に把握するためにも有用です。

病気の活動性の評価、治療法の選択や治療効果の判定にも使われます。

 

X線造影検査

造影剤を使用することで、病変の位置や拡がり方を確認することができます。

大腸から小腸を中心に、消化管全体を大まかに観察することができます。

 

消化管内視鏡検査

下部消化管内視鏡検査

小腸末端〜肛門までの粘膜表面を観察することができます。

縦走潰瘍、敷石像、びらん、不整形潰瘍など、クローン病に特徴的な病変を確認することができます。

また、腸管合併症である狭窄、穿孔、瘻孔、膿瘍の有無や、炎症の部位を調べることができます。

粘膜病変の一部を採取し、顕微鏡を用いて組織や細胞を詳しく調べることもあります。

 

また、この病気は口から肛門までのあらゆる消化管に病変が現れるため、以下の内視鏡検査も追加して消化管全体を調べます。

上部消化管内視鏡検査

口〜胃までの粘膜表面を観察することができます。

胃粘膜に竹の節に似た炎症が見つかることがあります。

 

小腸内視鏡検査

上部/下部消化管内視鏡検査やX線造影検査で病変部位が見つからない場合や、小腸に病変が疑われる場合、より詳しく消化管全体を調べたい場合に行われます。

小腸を観察するためには、カプセル内視鏡検査、あるいはダブルバルーン小腸内視鏡検査が用いられます。

 

MRI造影検査

造影剤を使用してMRIを行うことで、小腸、大腸内の病変と腸管外の病変を同時に調べることができます。

また、狭窄・穿孔・瘻孔・膿瘍や痔ろうなど合併症の観察をしたり、病変部位だけでなく病変の深さを調べる場合にも用いられます。

 

治療はどうするの?

病変部位によって治療法は変わりますが、主に内科的治療を行います。

 

内科的治療

病変の部位や重症度により、使用する薬が変わります。

目標とするのは、症状が落ち着いている寛解状態です。

寛解状態を維持するためには定期受診を怠らず、主治医の指示のもとで薬の服用を守らなければなりません。

 

アミノサリチル酸製剤

主に、ペンタサやサラゾピリンなどの5-アミノサリチル酸製剤が使われます。

この薬は、消化管の炎症を抑える作用があり、症状が改善した後も再燃を予防するために使われます。

 

ステロイド

効果が強いので炎症を抑えることができますが、長期間使用すると副作用が現れることがあるので、医師の指導の元で期間と量を決めて使用します。

寛解を維持する効果はないため、「寛解期」ではなく「活動期」に使用します。

 

免疫調節薬

クローン病は、前述の通り免疫システムの過剰反応が原因と考えられているので、イムランなど免疫反応を抑制する薬が使われます。

薬の血中濃度が安定するまで数ヵ月間かかる場合がありますが、得られるメリットも多い薬です。

活動期の症状を寛解に導く効果、寛解状態を維持する効果、再燃を予防する効果、ステロイドの使用量を減らす効果があります。

 

抗体製剤

クローン病の炎症を引き起こす原因物質に合わせて作られた生物学的製剤で、抗TNFα受容体拮抗薬(レミケードやヒュミラ)が使われます。

抗炎症薬や免疫調整薬などの効果が得られない場合に使用されることも多くあります。

炎症を引き起こす原因物質の働きを抑えることで炎症を軽減させる薬ですが、寛解導入や寛解維持の治療としても用いられます。

 

栄養療法・食事療法

食事による消化管への刺激を減らして腸の炎症を鎮め、栄養状態を改善させることが目的です。

 

栄養療法

栄養剤を体内に投与するという治療法です。

「経腸栄養療法」と「完全静脈栄養療法」の2種類があります。

 

経腸栄養療法

液状の栄養剤を口から服用する、または、鼻からチューブを入れることで栄養を取り入れます。

消化する過程が必要ではない消化態栄養剤(少量のタンパク質と脂肪含量がやや多い)・成分栄養剤(抗原性を示さないアミノ酸を主成分とし、脂肪をほぼ含まない)と、消化する過程が必要である半消化態栄養剤とがあります。

 

完全静脈栄養療法

経腸栄養療法を行うことができない場合には、この療法が選択されます。

「行うことができない」というのは、重度の狭窄がある場合や広範囲な小腸病変が存在する場合などです。

太い静脈にカテーテル(細い管)を刺したまま、高濃度の栄養輸液を投与します。

 

食事療法

栄養状態の改善だけでなく、腸管の安静と食事からの刺激を取り除くことで、腹痛や下痢、消化管症状の改善が期待されます。

症状が落ち着いていていれば一般的な食事が可能ですが、食事が原因で症状が悪化することもあり食事療法はとても大切です。

症状により気をつけるポイントが変わってしまうので、栄養士さんなどと相談しながら自分に合う食生活を確立することがポイントです。

一般的には低脂肪・低残渣(ていざんさ:食物線維が少なく消化しやすい食事)が良いとされています。

 

外科的治療

腸管合併症が進行している場合、外科治療が行われます。

研究班の調査によると、日本では発症後5年で約30%、10年で約70%の患者さんが何らかの手術を受けています。

クローン病は炎症部分を取り除いも再発してしまうことが多いので、できる限り保存的な治療法が選択されます。

 

外科手術

腸管をできるだけ残しておくようにするために、小範囲の切除を心がけます。

 

内視鏡的治療

合併症のうち狭窄(きょうさく)に対しては、内視鏡が届く範囲であればバルーン(風船)を入れて狭窄部位を広げる治療が行われます。

 

その他治療法

血球成分吸着除去療法

身体の中から一旦血液を取り出し、炎症を起こしている白血球を外部装置で取り除いてから再び血液を身体の中に戻すという治療法です。

下痢や血便、発熱などの症状や内視鏡所見など、潰瘍性大腸炎で60%、クローン病で50%の有効性が報告されています。

副作用としては、頭痛、嘔気、めまいなど、一時的に体内の血液を取り出すことによる一過性で軽度なものが認められています。

 

経過はどうなるの?

クローン病は、症状が現れなくなる寛解期と、症状が強く出る活動期を繰り返しながら経過します。

しかし、近年の医療の進歩により寛解状態を長く維持することが可能になっています。

寛解状態であれは普段通りに過ごすことができますので、定期受診と薬の服用を怠らないことが大事です。

 

Q&Aコーナー

Q:クローン病の患者さんは食事制限が必要?

A:クローン病は、発病の理由がまだわかっていない病気です。

ところが、食べ物の影響によって落ち着いていた症状が再燃することもあります。

一般的に、「低脂肪、高エネルギー、低残渣、高ビタミン、高ミネラル」なものは比較的安全に摂取できるとされています。

だからといって、どの患者さんにも共通する「食べて良い食品」「食べてはいけない食品」はありません。

動物性脂肪を避けて脂質は1日30g以下にする、水分に溶けない「不溶性食物繊維」(消化しにくい)を避けることは推奨されています。

効果的な食事療法については個人差が大きく、主治医や栄養士と相談しながら身体に影響を与える食品をみつけ、症状を安定させるようにしましょう。

 

Q:クローン病でも働くことができる?

A:クローン病と一言にいっても、現れる症状や重症度は人によって様々です。

安心して働くためには、定期受診を怠らずに身体の状態を評価することが大前提です。

その上で、各患者さんの病状に応じた仕事への配慮がやはり必要になってきます。

一般的に、治療の継続に支障がでる職場や、夜勤・当直勤務が多い職種はできれば避けたほうが無難です。

もちろん、適切な治療を継続的に行えば働くことのできる場合も多いです。

 

最後に

クローン病は、日常生活にある程度の制限はあるにせよ、コントロールがついていれば一般的な生活を送ることは十分可能な病気です。

長期的な寛解状態を維持できるように、日常生活を見直してみましょう。

<参考文献>
ガイドライン クローン病診療ガイドライン2011
研究グループ 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班

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